映画・DVDなどのコト 一覧

今月は前半快調、後半少しスローダウン。
新作を中心に観た感じかな。珍しく劇場で4本も観てるし。
あとは、楽天のスーパーセールでついついスターウォーズBD-BOXをポチッてしまったので少しずつ観ていったりしとりますですのことよ。


ロボット ( 2010 )監督: シャンカール A-
アクションもカースタントもCG処理もいちいちヤリすぎでもうむちゃくちゃでござりまするがなという感じなんだけどそこがツボにハマると心地よい。CGを贅沢にもっともくだらなく使っておりブラボー!ダンスシーンが思ったより少なかったのは短縮版のせい? 好きよ。
ちゃんと一部のヲタの人達にも届いているだろうか。そっち系が好きな人はチェックしといた方がいいと思うんだけど。観て怒ってもしらんけどさw。しかし『丘に、町が』がああした形で映像化されるとは(違。
ラジニカーントが六十過ぎのじいさんということは聞いていたが、ヒロインのアイシュワリヤー・ラーイも結構齢いってるのね。さすが美しいと見とれていたのだが小島のオジキのひとつ下なだけなのね。
悪玉ロボットとなる後半のラジニカーントはどうみても竹内力にしかみえない。よってCGによって大量に複製された竹内力が画面狭しと暴れまくる映画みたいなことになっている件。
名古屋でも完全版上映するかも、と思って今日観るの躊躇してたんだけど、観て良かったわー。楽しめた。インド映画とは相性がいいだろうとは思ってたんだけど。

ファミリー・ツリー ( 2011 )監督: アレクサンダー・ペイン A-
非常に感想が書きにくい映画だなあ、小津とかの映画を観た時のように。いや、かなり良かったんだけど。ゆったりじっくり家族の絆を始めとするテーマを描ききっており、ストーリーだけ追うと辛い話なのだが観終えた感想はまったくそうではないのは演出脚色のなせる業か。

カサブランカ ( 1942 )監督: マイケル・カーティス C+
映画から抜け出てきたようなハンフリー・ボガードがとにかくシブい、などというアホで腑抜けた感想しか出てこない程の消費し尽くされた人気作。まあでもバーグマンの行動原理にはいささか納得できんのだが、いかがなもんか。

DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る ( 2012 )監督: 高橋栄樹 B
これは戦争映画だ。勝利、敗北、歓喜、怖れ、輝き、緊張、体力の限界、妬み、いたわり、好敵手、フォーメーション、混乱、汗、リーダビリティ、成功、失敗、涙、ヒロイズム、賭け、祈り、選ばれし者、脱落、裏方、慰問、瓦礫、そして復興。
......なんて呟いてたんだけど、「シネマハスラー」とかでもとっくに「戦争映画」というワード出てたんだね。ま、誰が観てもそう思うかも。

監督失格 ( 2011 )監督: 平野勝之 B-
そうなんだよなあ、すべてはやっぱ生きてる側の人間の問題なわけで。その思いが死んだ人間に投射されていろんな感慨を引き起こすわけで。て、なに当たり前のこと書いてるんだ、おれ。といささか動揺するほどラストはイカしてる。

この空の下 長岡花火物語 ( 2011 )監督: 大林宣彦 B+
久々の大林映画。冒頭「A MOVIE ESSAY」と出るように全編モノローグで覆い尽くされ、台詞を含めて余白ほぼなしで「声」が支配する映画。戦時中と18年前と現在が共存し同時に語られる実験的な手法だがこの監督の手にかかると馴染み深いものになる。
物語を語ることのみが主眼ではなく「長岡」が語られることに重きが置かれているため、思わせぶりなカットの伏線回収を期待するとはぐらかされることになる。オープンエンドが宣言されていることもあるし。その辺はモヤッとするが、大林オールスターズの顔ぶれを眺めるだけでも楽しい。
僕にとって映画とは大林宣彦のことである。一時期までは確実にそうだったことを「この空の花」を観て思い出した。近作は全然観ていなかったので観なければ! もちろん過去作の未見作も。

第七鉱区 ( 2011 )監督: キム・ジフン D+
ハ・ジウォンに個人的には魅力を感じるから最後まで見通せたものの、映画としてはいささか薄っぺらい。多用されるCGの質は高く画も綺麗なのだが、怪獣映画としてのサスペンスが持続せずクライマックスでもカタルシスが得られない。もっと面白くなりそうだがいろいろ勿体ない映画。

スター・ウォーズ エピソードⅣ 新たなる希望 ( 1977 )監督: ジョージ・ルーカス A+
通して観るのは随分久しぶり。つかジャバ・ザ・ハットを見て違和感を覚えたので「特別編」を観るの自体初めてかも。で、やっぱりメチャメチャ面白かったことに驚き。ラストなんて総毛立ったもの。「私の部品を使ってください」の台詞には毎回泣かされるし。
日本公開を待ちに待って観に行った世代なので、いろんなことを思い出すなあ。ご多分に漏れず雑誌等で仕入れた前情報で公開前の餓えを満たしていたわけだが、映像を初めてみたのはTVジョッキーの福田一郎氏のコーナーだったか、水曜イレブンだったか。
で、公開を待ちきれず野田元帥訳の角川刊のノベライズが出たと知り、近所の本屋に買いに行ったら置いてなくって「スター・ウォーズありませんか?」と店のオヤジに尋ねたら「スター坊主?」と返されたわけだが、その本屋のオヤジとはなにを隠そう大和田伸也&漠兄弟のお兄さんである。
というのは名古屋市名東区にあった大和田書店という大和田兄弟のお兄さんが経営してみえたお店の出来事。実は長じて僕はここでバイトすることになるのだが、ヴィレッジ・ヴァンガードの菊池社長はこのお兄さんと共に東京の出版社を脱サラして名古屋で共に本屋を始めたというミニ知識。
あ、スター・ウォーズから話が逸れたw。ちなみに当時の大和田書店では五大路子と岡江久美子を加えた大和田兄弟夫婦でのサイン会とかもやってたなあ、行かなかったけど。

インクレディブル・ハルク ( 2008 )監督: ルイ・レテリエ C+
割と地味めな展開でどうなるかと思ったが、ハルク登場シーンはなかなかのド迫力でいいんじゃないすかネ。でもやっぱドラマ部分がイマイチ....。ま、CGといえばそれまでなんだけど良く出来てる。これで『アベンジャーズ』対策は一通り終わったな。

十二人の怒れる男 ( 1957 )監督: シドニー・ルメット C-
筋立て自体は知っていたが、なんで「怒れる男」なのかがよく解っていなかった。なるほどねえ、みなさんエキサイトしてます。あまり集中できなかったこともあり、期待した感動は得られなかったかな。

スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲 ( 1980 )監督: アーヴィン・カーシュナー B+
一番好きだった作品の割に最初の劇場公開以来、一度観たかどうか。とにかく色々忘れてて新鮮だったが、例の対決シーンのマスターピースっぷりは半端ない。色彩、陰影、構図、どれをとっても完璧。と刷り込まれちゃってるのかもしれないが。

J・エドガー ( 2011 )監督: クリント・イーストウッド C-
イーストウッドの新作はまたも一筋縄ではいかない作品。なんとも感想を抱きにくい、面白いかと云われればいささか退屈ともいえるがけしてつまらなくはない。通常の伝記映画を期待すると微妙に裏切られるし時制がバラバラの語りはとても観にくいのだが無下に否定できない。

ダーティーハリー3 ( 1976 )監督: ジェームズ・ファーゴ C+
うーん、今回はいろんな意味で地味というかスケール感はない。新米女性刑事とのコンビネーションとか面白くなりそうな要素はそこかしこにありながら、割と平坦に流れてっちゃってる感ありで勿体ない。でもいかにも70'アメリカン的な空気感とか嫌いになれないけども。

リアル・スティール ( 2011 )監督: ショーン・レビ B+
イイね! ロボットフェチにはところどころ萌えポイントが。後半はまあ予想の範囲内の展開に落ち着くので、前半の方がゾクゾクしたかも。いやでも格闘ものの定石を外さずにちゃんと燃えさせてもくれるんだけどね。あと個人的にはATOMよりアンブッシュの方が好み。

ダークナイト(吹き替え) ( 2008 )監督: クリストファー・ノーラン B+
日曜洋画劇場にて公開時以来久々の体験。ちょっと違和感あるね。あまり吹き替えで観ないからだろうな。

ツリー・オブ・ライフ ( 2011 )監督: テレンス・マリック C+
細かいカットの積み重ねで成立しており、そのひとつひとつが大変美しい。内容そのものはいささか忍耐を要するものと云えるかもしれないが、映像自体は観ていて飽きることない。ジェシカ・チャステインがいい。メチャメチャいい。

サニー 永遠の仲間たち ( 2011 )監督: カン・ヒョンチョル A-
御多分に洩れず、ノックアウト気味。まず女優陣の魅力が半端ない。彼女たちを観ているだけで持って行かれる。少女時代と中年期のWキャストのそれぞれが全員完璧に近いのが奇跡。けしてハッピーな物語でもないのだが観ていて多幸感に包まれるのは何故?
結末近くの展開(そち達に褒美を使わす的な)には大いに不満が残るのだけど、僕がこの映画に惹かれたのはたぶん物語とか筋とかじゃないんで、そんなことはどうでもよいのかもしれない。シーンのひとつひとつが宝物のようでなんでもない箇所でも突如涙腺が緩んだりして。
そんな中でも個人的に一番高まったのは、ヘッドホンかけられーの「ラ・ブーム」のシーンと未来の自分へのビデオレターのシーンかな。理屈ではない感情が揺さぶられるような絶妙の演出にヤラれた。
観てて思ったのは、韓国の80年代って日本の60~80年代がギュッと圧縮されたような感じなのね。だから懐かしさというより奇妙にねじれた既視感のようなものを観ている間、覚え続けたのかな。

今月はまずまず好調。
なかなかバラエティに富んだ鑑賞ができた。
こういうごちゃまぜの観方がやはり自分に合ってる。
「貞子3D」を観に行くつもりなどまったくなかったのだが、流れで「リング」シリーズを観るなど、ためになったw。


アーティスト ( 2011 )監督: ミシェル・アザナビシウス B+
シンプルなストーリーにところどころギミックを入れてラストは粋なタップダンスでシメるという観ていて気持ち良い映画。登場人物の行動原理にやや疑問を抱かなくはない部分もあるがまあそれはおいといて、主演の二人も実に魅力的に映っておりサイレントでの画にハマっている。

捜査官X ( 2011 )監督: ピーター・チャン A
サイコミステリーぽい展開になるかと思いきや....、あれあれというウチに矢継ぎ早に繰り出されるあれもこれも。クライマックスもまだくるかまだくるかとお腹いっぱいに。僕は経験値低いけどずっとクンフー観てきた人にはご褒美のような映画なんじゃないかと。ビビる程おもろい。
邦題がちょっとアレだなあとは思うけども、前半の静も後半の動もどちらも吐くほど面白かった。ヘンでいびつでありながらキチンと抑えられるべきところが抑えられ、盛り上がるべきところが盛り上げられているのだもの。こういうワクワクするアクション、邦画でも観たいんですが。

チャーリーズ・エンジェル・フルスロットル ( 2003 )監督: マックG D
前作はかなりのお気に入りだったんで楽しみにしてたんだがなあ。オープニングのCG全開やり過ぎアクションでどっちらけ。もうマンガですよマンガ。空飛んでんじゃん、もう、生身で。物語も単純な筈なのに全然頭に入ってこないしこれはノレません。

バカヤロー! 私、怒ってます ( 1988 )監督: 渡辺えり子、中島哲也、原隆仁、堤幸彦 D
森田芳光総指揮のオムニバスシリーズ一作目。当時そこそこ流行ったよね。中島哲也、堤幸彦の劇場映画デビュー作が含まれているということで気になっていたのだが、双方ともあまり「らしく」ない作品で拍子抜け。相楽晴子の可愛さが唯一の救い。

続・激突!/カージャック ( 1974 )監督: スティーヴン・スピルバーグ B
本来『激突!』とは何の関連もないと聞いていたがまさにその通り。派手なカーアクションやサスペンスを楽しむ映画ではなく、ややおマヌケに見える延々と続くパトカーの隊列を愛でつつ『幸せの黄色いハンカチ』ばりの男女三人のロードムービーとして楽しむべき映画。

プラトーン ( 1986 )監督: オリヴァー・ストーン B+
もっと反戦映画的な地味な内容かと勝手に思っていたが、もうちょっと娯楽映画よりなのね。いやテーマ自体は重たいので単にドンパチを楽しむ映画ではないんだろうけど、無駄を省いたテンポのいい展開で緊張感のある戦闘や隊内部の対立を描く。主人公の内面はちょっと謎のままかな。

ソナチネ ( 1993 )監督: 北野武 C+
二年ぶりだが結構忘れてるもんだね。その中でも沖縄のあの道の風景は記憶に刻み込まれてるなあ。これはストーリーを追ってもしょうがない映画であると思うのだがどうか。個人的には緊張度が高すぎてやや肩が凝る印象。その分、相撲のシーンとかがやっぱ好きだなあ。

リング ( 1998 )監督: 中田秀夫 C+
初見。定評ある作品に対して失礼ながら、思ったより面白かったけども、そんなには面白くない。でもこれは、もうかなり消費され(ネタバレし)尽くしてしまった感がある作品に対してフェアじゃない感想かしら。後は竹内結子の幼顔に萌えるとか中谷美紀の出番の少なさに憤慨するとか。

WALL・E ( 2008 )監督: アンドリュー・スタントン B-
一回目の方が楽しめたかなあ。いや好きな作品なんですがもっとべらぼうに面白かった印象が。ま、地味だよね、こうやって落ち着いて観ると。キャラ達を愛おしく観賞しながらゆったりした気持ちで観るのが二回目以降の正しい見方かな。

らせん ( 1998 )監督: 飯田譲治 D-
ううむう。怖くないし面白いとも言い難い。でもつまらなくもない。佐藤浩市いいなあ、役得だなあ、という感想。中谷美紀はこっちで大活躍だが、活躍し損というか。

リング2 ( 1999 )監督: 中田秀夫 C
割と正しい続編のような気がするけども原作ファンにとっては...なんだろうか。『らせん』はなかったことにして楽しめた。怖い度も上。でも一番怖かったのは○○病院の患者の顔だったけども。不満といえば、井戸はともかく、ブラウン管からもやっぱやってほしかったなあ。

アビス 完全版 ( 1989 )監督: ジェームズ・キャメロン B-
完全版で171分。長すぎるのではと懸念していたが、たっぷり見応えがあった。物語のひとつの(文字通り)核となる核弾頭の扱いに違和感を感じるものの、SF的設定に頼り切らず適宜見せ場を作っているところに好感。その分、最後で一気にその部分が進行して呆気にとられるのだが。

奇跡 ( 1954 )監督: カール・ドライヤー C-
計算された流れるようなカット割り、輪郭のくっきりとした映像、無駄のない台詞、等々が印象的ではあるも、「信仰」とその具現化をテーマとした内容はシンプルだがやや近寄りがたい。その単調さは一方で非凡ではあるが、「最高の映画芸術」を実感するには一定の集中力が必要。

太陽がいっぱい ( 1960 )監督: ルネ・クレマン B-
前半のやや屈折した展開がいかにもフランス映画っぽくその構えで見続けたら途中から見慣れたサスペンス風になりやや気が抜けた。というか見慣れたサスペンス風にしてもその元祖に近い存在には違いなかろう。多くの模倣を先に消費してしまったからねえ。しかしドロンは美男。

スパイダーマン3 ( 2007 )監督: サム・ライミ C+
「赦し」を裏テーマに掲げたのであろうがあれこれヤリスギて「人はどれぐらいまでヒドイ事をしても許されるのか」大会になってしまっており、「物語のための物語」を細かく繋ぎ合わせた散漫な印象だ。娯楽編としては「2」のが上だが、今作にも妙な魅力があるのは認める。

ザ・ウォード/監禁病棟 ( 2011 )監督: ジョン・カーペンター B+
最新作ながらなんかカーペンターっぽくないねえ。物語を構成する要素がという意味で。でもシンプルで面白いのはカーペンター印。アンバー・ハードにノックアウトされたこともあり、かなり気にいった! 精神病院ものは独特な雰囲気があってじわじわくるねー。

狂った果実 ( 1956 )監督: 中平康 D
慎太郎原作・裕次郎主演の例のアレです。みんな早口で録音も悪いのかセリフが聞きとりにくいなあ。ラストのぐるぐるどかーん含めて僕にはあまり響かなかった映画。出てきた役者陣で一番印象に残ったのが岡田真澄だし。(ユージ似のw)

グリーン・ランタン ( 2011 )監督: マーティン・キャンベル C-
日本ではお馴染みでないキャラでいろいろ戸惑うことが多い。想像したものをなんでも具現化できるという何でもアリな能力を持つヒーローで、映像表現自体は面白いが、当然何でもアリな分、物語的な面白さは大幅に減じる。どこに焦点を置いて観れば良いのか判りにくい作品。

かもめ食堂 ( 2006 )監督: 荻上直子 C
何が起こるでもない物語だが不思議と飽きずに観られるのは小林・はいり・もたいのトリオの独特の存在感および演技に依るところも大きい。かなりしつこい反復演出ではあるがそれほどとも感じないのは異国の風情もあるのだろうが監督の力量ととっておく。嫌いじゃなかったよ。

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか ( 1964 )監督: スタンリー・キューブリック C+
Dr.strangelove他セラーズの演技は十分楽しんだが、この手の風刺的笑いは個人的にはあまり得意なところではない。名作の誉れ高き本作ながらやや退屈してしまった。それでもタイトルバックやミサイル落下シーン、ラストの展開の流れは好きかな。

前半は好調だったが、後半はたった四本。
忙しくなったというのもあるが、とにかく眠気にやられた。
劇場鑑賞は2本。

監督名の横に記号をつけることにした。
個人的に観た後記している満足度(楽しめた度)である。あくまでその時の、ということで。


吸血鬼 ( 1932 )監督: カール・ドライヤー C+
茫洋としつつもクリアな夢幻空間。『雨月物語』にも通じる幻妖さを感じると共に、ところどころのカットがめっちゃ怖い。ドアの奥から降りてくる老人、何かに取り憑かれたような女性の表情、そして死神が持つような大きな鎌。物語は捉えにくいが無問題。

幕末太陽傳 ( 1957 )監督: 川島雄三 B
画面の隅々までコントロールされきった映画芸術。女郎屋のセットがとにかく素晴らしく、縦横無尽に走り回る左平次が活き活きしている。そしてなんというラストカット。あのキメ画は大スクリーンで確かに観たかったかもしれない。
しかし若き岡田眞澄はユージみたいだよなあ。

ドライヴ ( 2011 )監督: ニコラス・ウィンディング・レフン C++
評判良く期待して観たが、体調がイマイチだったこともあるかもだが、そんなにはノレなかった。80年代後期風サウンドを多用してドギツイ暴力シーンをイメージV的に魅せるノリを否定するわけではないがそれほど興味がないというか。でもそこかしこに気にいったシーンもあるのだが。

荒野の七人 ( 1960 )監督: ジョン・スタージェス C+
想像していたより圧倒的なユル・ブリンナーの主役感。菊千代の存在が若造役の勝四郎と吸収合併されてしまっているためトリックスターの不在が物語をいまひとつパッとしないものにしている。不抜けた恋愛沙汰で締めくくってる場合じゃないだろうと不満。アクションはまずまずだが。

サンセット大通り ( 1950 )監督: ビリー・ワイルダー B+
評判に違わぬ傑作。ザ・女優を今の目でみればカリカチュアライズしたかのように演じたグロリア・スワンソンの演技は彼女自身に則れば自然体だったのかもしれない。画面にピシリとはまる華やかさを醸し出している。シュトロハイムの重厚かつ存在感ある演技も見所。

男はつらいよ ( 1969 )監督: 山田洋次 C+
第一作をちゃんと観るのは初めてだろうな。既にしてフォーマットはほぼ完成。「けっこう毛だらけ」ほか有名なフレーズも出揃っており、寅さん世界を堪能できる。さくらの見合い相手が広川太一郎だったことに驚いたり、前田吟の若さに感心したりとあれこれ楽しめる。
しかし幼き頃は実は「寅さん映画」が嫌いであった。親に連れられて松竹の映画館に行ったりしたものだが、併映の55号やドリフの映画が目当てで寅さんになると途端に退屈してぐずったりしたものと思われる。ウェットな笑いが苦手だからと認識していたがこうしてみるとさほどウェットという訳でもない。

モテキ ( 2011 )監督: 大根仁 B++
無数の小ネタ満載のサブカルあるあるたっぷりに日常の細かな「リアル」感で物語の根幹にある「非リアル」を支えきっておりアッパレ。前半の軽快なテンポに比して終盤がややクドイかなあと思いつつも許容範囲。JGLトリビュートっぽいストリートダンスも決まってすっかり楽しめた。

惑星ソラリス ( 1972 )監督: アンドレイ・タルコフスキー C+
強烈な睡眠映画とのウワサに戦々恐々としていたが、意外と眠らず最後まで観ることができた。ひとつひとつのカットが長いし展開は超遅いが興味は持続するよ。自分にしては珍しく2度も読んだ原作が好きなせいかも。ハリー役も美しいし。ただし観終わったあと強烈な眠気がw。

プラネット・テラー in グラインドハウス ( 2007 )監督: ロバート・ロドリゲス C-
ロバ・ロドファンとしてはそれなりの期待を持って「とって置いた」作品なのだが、もうひとつといったところ。スプラッタ・ゾンビ・アクションという題材としては『フロム・ダスク....』に負けている。ギミックは面白いんだがもたついている。

秋刀魚の味 ( 1962 )監督: 小津安二郎 B
ザ・オトナの酒の飲み方を2時間たっぷり見せつけられる。そして礼節、たしなみ、人とのつきあい方。ドラマチックな展開なぞどこにもないのに終始退屈せず画面にクギづけになる。ドラマツルギーとはなんぞや、映画とはなんぞやと迫られるかのような佳品。

失われた週末 ( 1945 )監督: ビリー・ワイルダー B-
ビリー・ワイルダーの初期作品。アル中の作家の苦悩を描く。ハッとさせられる描写や作劇法に心を掴まれるが、後半ちょっとくどいかな。基本的に感情移入しづらい主人公の性格設定にも物語に飽きさせる要素があるかもしれない。ラストに至るほど残念な佳作。

ジョン・カーター ( 2012 )監督: アンドリュー・スタントン B+
冒頭、異世界風味バリバリの飛行船が飛び交うシーンでほぼ満足。白コングの迫力と白熱したチャンバラシーンにも目を見張った。脚色も悪くないとは思ったがもう一押し何か上乗せしてくれれば、と贅沢な思いも。それでもこれだけの映像を観せてくれれば文句はない。
「火星のプリンセス」の映画化、なんて昔のスターログとかの海外情報記事の隅っこにたまに本気度15%ぐらいの感じで良く載っていたような記憶が。それを思うだけでも感慨深いものが。ちなみに原作は幼き頃(といってもいいぐらい)、第一作のみ読んだハズ。

昼顔 ( 1967 )監督: ルイス・ブニュエル B
ストーリー自体は予測可能なある種オーソドックスな作りながら、ドヌーブ演じる主人公の夢想シーンがトーンを変えずに淡々と差し挟まれ、現実と地続きの非現実を静かに描き出し、やがて終盤それは現実を侵食していくのである。
ここでのカトリーヌ・ドヌーブは一見ちょっと小島慶子を彷彿とさせる。メイクのせいかな。異論は認める。

隠し砦の三悪人 ( 1958 )監督: 黒澤明 B
冒頭近くの超絶モブシーンに圧倒され、三船の刀振りかざしての馬術に魅了され、やっぱリアリズムって有無を言わさないものがあるなと実感。CGでは同様の感動は得られまい。今更ながらにSW ep4の祖型を追いつつ観たのも興味深かったが、もちろん単独で純粋に面白い。

ヤング≒アダルト ( 2011 )監督: ジェイソン・ライトマン B+
冒頭からの細かい描写がそこかしこにイカしてて、割にシンプルな話にも関わらず最後まで飽きさせずに見せる。相当イッちゃってるヒロインではあるものの魅力的に描かれシャーリーズの演技も良かった。ただなんだろう、物語にバネが足りないので少々物足りなくも感じる。

お葬式 ( 1984 )監督: 伊丹十三 A
ウン十年ぶりの再見だが実におもしろい。切り取られているカットのひとつひとつがどれも興味深い。お葬式あるある映画のように当時喧伝され自分もそう思い込んでいた節があるが、そんな器の映画ではなかった。クセ者揃いの演技陣の中にチョイ役で黒沢清が顔を出すがすぐにわかった。

LOFT ( 2006 )監督: 黒沢清 C-
いやあ、難易度高いわ。ていうか難易度なのかこれって。どう観たっておもしろいだろ、これは、と言い切るにはまだまだ僕も修行が足りない。ひとつ踏み外せば何も響かない空虚な深淵がすぐそこに控えているのだ。ラストに爆笑すべきなのかどうかもわからぬままにそっと辺りを伺う。

ゴーストライター ( 2010 )監督: ロマン・ポランスキー B
じわりじわりと進行するサスペンス。余裕たっぷりの物語展開。人物と周囲をゆったり捉えた撮影。曇天中心の落ち着いた質感。どれをとっても一級品の風格。ラストの処理にも唸る。

戦国自衛隊 ( 1979 )監督: 斎藤光正 C+
とりあえずまあ何を置いても石川賢のマンガからそのまま抜け出してきたような相貌の千葉ちゃんがカッコ良すぎます。映画的にはそこかしこにツッコミどころ満載ではあるけれど、いささか長すぎるという点を除いては存分に楽しめた。夏八木と千葉のキャッキャウフフも堪能。
映画をキチンと観るのは初めての筈だが、かかってた曲はほとんど知ってるという不思議。
当時の「バラエティ」でさんざん撮影時の情報とか読んでたクセに肝心の映画自体は観てないというパターン。

チェンジリング ( 2008 )監督: クリント・イーストウッド B++
なんとも凄い映画だなあ。ほとんど前情報なしで観始めたのだが、全然予想と違う映画であった。ヒューマン・ドラマかと思ってたら、告発ものであり、サスペンス・ミステリーであり、ある種のホラーでもあり、捉え所がない映画と云えるのだが得も言われぬ凄みがあるという。
アンジェリーナ・ジョリーの顔を活かしきった映画でもある。画面の左半分に大写しにしてデカい眼からツーッと一筋の涙をこぼすカットなんて彼女じゃないと画にならない。

家族ゲーム ( 1983 )監督: 森田芳光 C+
やはりかなり特異な映画だとは思うが、今の僕にとってはそれほど引き込まれるものでもなく、やっぱ観るタイミングというのはあるなあ、と再認識。それでもラストの平穏さ/不穏さにはちょっとヤラれた。森田監督作品は代表作を全然観てないのでこれから少しずつ。

オンリー・ユー ( 1994 )監督: ノーマン・ジュイソン C+
マリサ・トメイとロバート・ダウニー・Jrのロマコメ。さほどよく出来た話とも云えない映画だが、マリサ・トメイの魅力で魅せる。この人、しっかり認識してなかったんだけど好みだー。「フォー・ルームス」の4話目に出てきた人ね。ロバダウも若くて今と違う。

昼下がりの情事 ( 1957 )監督: ビリー・ワイルダー B
ビリー・ワイルダーのロマコメであるが、ヘプバーンの魅力が強烈過ぎて洒脱な脚本・演出なんだろうがやや薄まってみえる。BGMがかかるところでは画面に実際の楽団を登場させたりホテルの隣の部屋の犬のギャグ等、細部も楽しめるし飽きないのだが。クーパーは年取り過ぎた。

コンテイジョン ( 2011 )監督: スティーブン・ソダーバーグ B
冒頭からの淡々としたカット割りとクリフ・マルティネスによる音楽が着々と進行する事態を端的に表現しており静かな怖さを感じる。多彩なキャストを豪華に使い物語を多角的に描くがフィッシュバーンの存在が映画に重量感を与えているといっていいだろう。ラストの構成もいい。

DEAD OR ALIVE 犯罪者 ( 1999 )監督: 三池崇史 C-
ウワサには聞いていたが、なるほどなかなか面白いけど、話の内容は、まあ、ねえ。よく話題に上るラストはその後の三池作品に連綿と受け継がれてるね。そっちよりも冒頭の猥雑なカットバックによるオープニングにかなり惹き付けられた。

ヒューゴの不思議な発明 ( 2011 )監督: マーティン・スコセッシ A
おもちゃ好き、機械好き、手品好き、そして映画好き必見。つまりはギミック=からくりへの愛、そして人の作り上げたもの(人工物)に対する深い敬意に溢れた映画。その意味で観てるだけで泣ける。大好きな映画だ。ついでに本好き、駅好き、クロエ好きの人も必見。
3D字幕版で観た。その選択は間違ってなかったと思う。近隣では3D吹替版しかやってなかったので少し遠くまで足を伸ばした甲斐があった。非常に明快かつ効果的な3Dで、その真価を実感したのは『アバター』以来だなあ。使い方はかなり違うが。
シネマハスラー『ヒューゴの不思議な発明』回を聴く。概ね納得。ただ僕自身は全体の雰囲気と打ち出された内容に激しく共感したので、幾つかの欠陥はあまり気にならなかった。この監督には不向きな部分もあったろうが、この監督じゃなかったら成し得なかった部分もあるだろう。
僕自身もかなり遅れをとって観たわけだが、これから観るという人は、もしあの映画を観たことなければとりあえず簡単に観られるので観ておいた方がいいんじゃないかな。ネタバレにはならないと思うけど。それでも完全に白紙で観たい人はクリック禁止。→ http://bit.ly/GQAdgk

宇宙戦争 ( 2005 )監督: スティーヴン・スピルバーグ B+
スピルバーグ版。ジョージ・パル版のハイライトである小屋での攻防は残しつつ、より派手により執拗に、主人公視点に絞ってソリッドに恐怖を描く。テロ後の世情を如実に反映したテイストで諦めざるを得ないような侵略戦争からの逆転を描き、希望の灯りを点すラストはやや陳腐。

ブログで水道橋博士が「全盛期の近田春夫さんのラジオを聴いている様」と絶賛するので、とにかく聞いてみようとTBS RADIO ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフルの1コーナー「シネマハスラー」をポッドキャストで何本かGET。
うーん、これは。
今日あちこち移動の間に立て続けに6本ぐらい聞いてしまう。
1本が20分?30分近くあるので、2時間半分ぐらい聴いた計算になるが、オモシロイねえ。
オモシロイというか、しゃべりが抜群であります。

極めて濃密な映画評で、歯に衣着せぬ物言いながら論理的で下調べ等の裏付けもきちんとある。
映画の見方には異論があろうと、一人でこれだけの時間1本の映画について蕩々と語る才能は並々ならぬものがあり、誰もが認めざるを得ないのではないか。

上記ページから是非いくつか聴いてみて欲しいのだが、今日聴いた中からオススメは、堤演出メッタ斬りの「9月20日 20世紀少年」、続いて特別ゲストの町山智浩に喰われかけてはいるものの「2月21日20世紀少年<第2章>最後の希望」、認めるところはちゃんと認める「12月13日私は貝になりたい」、品川の「おしゃクソ」である所以をしっかり見極めた上での批評が明快「3月28日ドロップ」のあたり。

たくさんあるからもっともっと聴かないと。
というか、このコーナー以外も聴いてみよっと。


試写会、見てきました。

前作よりあんまり盛り上がってないなあ、と勝手に思っていたんだけども、名古屋での試写会、知ってるだけでも3度目。
今日の市公会堂は3Fまでぎっしりの満席で、年齢層も多彩。
そんなにみんな楽しみにしてたのかなあ。結構特殊な映画だと思うのだけど。

さて、感想としては、今作も原作コピー度をいかに楽しむかということに尽きるのだけど、その意味ではひとつひとつのエピソードが短すぎて不完全燃焼気味。
つかそもそもこれ、原作読んでない人、果たして内容ちゃんとわかったのだろうか?
第一作を見てるのは大前提としても、それだけではなんのこっちゃわからん、想像力で補うには無理がある展開になってしまっているのではないかと。
原作の名場面のダイジェスト版みたいな印象を受けた。
だから、TVシリーズでちゃんと尺取ってやるのが最適だと思うんだがなあ。
そうすっと、こんなに予算かけられないだろうってのが難点だが。

シリーズの主人公たるケンジこと唐沢寿明がほとんど出てこない今作、代理主人公のカンナの平愛梨は目力もあってがんばってはいるが、一本の大作映画を支えるにはちょっと荷が重いよね。
オッチョの豊川悦司がストーリー的には裏主人公で映画的には主演となるわけなんだけども、どうもなんだかコスプレ然としていてピシッとこない。
ただ狂言回し役の小泉響子の木南晴夏が鮮烈。
写真見た時から似すぎと思ったけども、仕草や表情からしてどうみても小泉響子本人にしか見えない(笑。
原作でも今パートのストーリーにおける最重要人物であるし、このキャスティングでこの映画の半分は持ちこたえているといっても過言ではない。

そのほか、クリソツキャスティングは今作も冴えていて、仁谷神父の六平直政とかホクロの巡査の佐藤二朗とか、キミ達、この役をやるために神が造りたもうたのではないの、と云いたくなるそのままぶり。

というわけで、2時間20分の長丁場、ぎっしり話が詰め込まれているのでまあ飽きないといえば飽きないのだけども、やはり映画として釈然としないものが残る出来ではあったかな。長いのに慌ただしい、といった印象。
いや、モブシーンとかなかなか迫力あるんだけどね。

小中学生の頃、祝日や夏休みとか春休みの月〜金の昼に家にいると、まあだいたいゴロゴロTVを見ていたわけで、ワイドショーなんかは当然見ることになるわけだけど、もっと楽しみなのは料理番組だったりした。
土井勝や3分間クッキングはもちろん、なんといっても高島忠夫、寿美花代夫妻「ごちそうさま」が好きだった。
さらに別格として挙げられるのがこの番組。

 思わずワインをグイッと空けてしまうはず! 1974年より東京12チャンネル(現・テレビ東京)で放送され、欧米のステキな料理と、ユーモアに溢れるトークとで、日本の視聴者に偉大なるトラウマを与えた、グラハム・カーの『世界の料理ショー』がついにDVD-BOXとなって登場! 2009年3月25日に発売されます。


どわー。これ見たい見たい見たい。

名古屋ではどこでいつ頃放送されてたんだっけかなあ。
テレビ愛知が出来てからだっけ? となると高校の時に見たってことになるんだけど。
もっと前に見たような気も。

ま、とにかく、高カロリー料理の数々をグラハム・カーが軽妙なトークを織り交ぜながらワイン片手に調理するバラエティ料理番組。
ペッパーミルや溶かしバターなんてものを初めて知って、それらは確かにトラウマのように我々の脳裏に刻み込まれたのであった。
あとは、スゲーでかい冷蔵庫とオーブンね。
そゆのがないと、欧米料理はやっぱ出来ないのでは、と思い込まされたのもこの番組。

レンタルでも見られますように。
わかったかい? スティーブ。

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時間が空いたので映画を見ることになり、実は『GSワンダーランド』を見たいと思っていたのだが時間が合わなくて、上映中の他の作品を探していたところ、『ハッピーフライト』とこの作品が候補にあがった。
『ハッピーフライト』は出来が良さそうであったが、より興味を惹かれたのがこちらだった。
八嶋智人&サトエリってのがそんなに得意じゃない(キライなわけでもない。特にサトエリには興味自体はあるんだけど...、微妙な感情)のだが、池田敏春監督ってのが気になる。
そんなに映画鑑賞歴を持たない僕が『人魚伝説』『死霊の罠』『ハサミ男』等、結構監督の作品を見ているのは何かの縁?
で、あの作風の監督が人情ものって??? という興味。

見終わって、基本的には奇を衒った演出もなく、ダレ場があまりない佳作と思ったが、後半の展開に感情移入ができない(なんでそんな行動とるんじゃ!)と思ってしまうと評価が変わってくるかも。
脚本に文句をつけるわけでもないが、その展開に持ち込む部分が少し雑な印象。
もうちょっと何かを書き込むだけで、割り切れる心持ちに大多数の観客を連れ込めたのではと思うのだが。
原案とされた織田作之助の短編二つを読んでないので、あんまり突っ込めないけど。

その多少違和感の残る後半部も、他の池田作品のように異空間に連れて行かれるのかという程、異質なわけではなく、そういう意味では監督らしさを期待する向きには拍子ぬけかも。
池田監督の作家性をこの作品のどこに見出すのかということについては、他の方にお任せ致します。

主演の二人はまずまず好演。
佐藤浩一、赤井秀和の脇もそれぞれの持ち味を十二分に出していたが、渋谷天外がラストの一演技で全部持って行ってしまった感あり。さすが。

引っかかるところもないではないが、総じて好きか嫌いかでいえば、好きな映画。

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小泉今日子が圧倒的である。
互いに隠し事を秘めたまま日常を送る家族の母親役と、『空中庭園』(2005)と被る役どころではあるのだが、抑えた演技でありつつもほとばしるもののまぶしさは小泉今日子ならでは。
この貫禄は一体なんだろう。

リストラされて、朝普通に会社行く振りして家を出て、日中を職安や炊き出しに並んで過ごす父親というある種記号的な存在を、さほど白々しく見せなかったのは、香川照之の「役者生命をかけた」という演技の賜物である。
空洞化された威厳を頑なに守ろうとする父性を自然に表現している。

映画では語られないのに、この夫婦がおそらく20年近く育んできた家庭の歴史が、しっかり見る者に現前していたのは、二人の産み出した磁場によるものなのか、はたまた監督の力量か。
二人の視線が交錯するシーンは、その年月の重みをひしひしと感じさせている。

後半のファンタジックな展開における小泉今日子の目がそれまでの生活における目と全然違うのが素晴らしい。

それと付け足しで、小学校教師役のアンジャッシュ児島がなかなか良かったなあ。
出演シーンはなかなかのアクセントとなっていたのではなかろうか。

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またまた試写。
北野作品は初監督作の「その男、凶暴につき」を見ただけで、その後ちょうど映画自体をほとんど見ない時期に移行したこともあって、それ以降、実は一本も見ていない。
だから「世界のキタノ」をあまり肌で実感できてないんだよなあ。
ただこのところの不評と云われた2作品「TAKESHIS'」と「監督・ばんざい!」には、なんだか妙に興味がかき立てられており、機会があれば見たいなあとは思っていた。
今回の「アキレスと亀」に関しても、事前情報をほとんど得ていないながら「見ておけよ」という直感的な内なる指令に付き従うがままに、ヤフオクで見かけた試写状を落札していた。
以下ネタバレ感想。

公式HPとかにはタイトルロゴのすぐ下に「夢を追いかける夫婦の物語。」とあり、たけしと妻役の樋口可南子が並んで立っている写真が大きく使われている。
なんとなく夫婦愛を描く「いい話」なのかなあ、というイメージが湧くというものだが、欺されてはいけない。
この映画はそんな「いい話」のイメージとはいささか感触の違う、異形の芸術バカについての物語である。

物語は3つのパートに分かれ、ほぼ等分に語られる。
裕福な家に生まれて絵に興味を持つが、家が没落しさまざまな不幸が襲いかかる少年時代。
美術に思い切りのめり込む道をただ模索する一方で、理解者たる妻と出会う青年時代。
夫唱婦随で芸術主導の生活を送るが、日常生活をまともに送ることが出来ず、家族の解体から人間性の崩壊までに至る中年時代。
たけしと樋口可南子が演じるのはこのうち第3のパートのみなので、登場は全体の半ばを過ぎてから。
「夫婦愛」がテーマみたいに宣伝されているが、ほんまかいな、というのが視た後の素直な感想である。

「アキレスと亀」のパラドックスをアニメで解説するところから映画はスタートする。
アキレスは亀にけして追いつけないというアレである。
続いて始まる第一のパートは、身辺環境の劇的な変化にも関わらず、ひたすら絵にしか関心を見出さない、通常の感覚からすれば「不気味な」少年・真知寿を淡々と描く。
戦後〜昭和30年代ぐらいの時代のイメージをセピア色のトーンで質感たっぷりに見せ、切り取っておきたいようないい場面が多い。
中尾彬、大杉漣、伊武雅刀といった熟練の役者が存分に持ち味を見せつけてくれる。
筒井真理子、円城寺あやといった女性陣もしみじみといい。

第二のパートは、その少年が成長した青年期を柳憂怜が演じる。不気味さが薄れ、つかみどころのない感じに変化しているのは、物語的には美術学校の一種異様な環境に身をおくことになったせいかもしれないが、柳の資質によるところが大きい。
しかし、考えてみればユーレイって僕より年上なんだよなあ。青年役って、と思うが、激しい違和感は感じないし、ハマっているとも思える。
時代的には昭和40年代ぐらいのイメージで、少々イカれた「現代芸術」狂想曲を描く。
麻生久美子は樋口可南子の娘時代としてまったく違和感がないし、とても魅力的に見えるのだが、この時点の話の中ではあくまで脇役だ。

第三のパートになり、たけしが登場すると映画の色調がガラッと変わる。
ギャグやコント的な場面が増え、真知寿の芸術バカぶりはぐんぐん加速し一気に日常を突き抜けてしまう。
最初は滑稽なばかりだが、妻や娘との別離を経て段々と哀愁を帯び、そしてぞっとする領域に至る。それらはすべて紙一重なわけだが。

さらにこの映画を彩るのは、全編を通じてほとんど無意味に近く続出する死体の数々。
これらの死体は、日常的な「死」をイメージさせない。
真知寿にとっても、そしてこの映画にとってもオブジェにしか過ぎないのだ。
そのオブジェクト化された「死」が加速して行き着く先の、とってつけたようなラストに、居心地の悪い気分のまま観客は席を立つことになる。

いやあ、わかりやすい映画を撮ったなんてインタビューに答えてるけどさ、亀が真知寿でアキレスが妻なんて説明では、わかったような気にもならない。
お仕着せの説明ではなく、アキレスと亀にそれぞれ何を見出すかで、この映画の見方が変わってくるのかもしれない。

出演者は細かい脇役に至るまで全員良かったし、さまざまな要素、部分で残るところがあった。
柄になくあれこれ語りたくなるのだけど、とりあえずこの辺でやめておこう。
内なる「この映画を見ろ」という指令は正しかったことがわかった。
最後で放り出されたような気分になったものの、どうやらこの映画が結構好きらしい。
さかのぼって北野作品を見ないとなあ。

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