『トウキョウソナタ』監督:黒沢清

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小泉今日子が圧倒的である。
互いに隠し事を秘めたまま日常を送る家族の母親役と、『空中庭園』(2005)と被る役どころではあるのだが、抑えた演技でありつつもほとばしるもののまぶしさは小泉今日子ならでは。
この貫禄は一体なんだろう。

リストラされて、朝普通に会社行く振りして家を出て、日中を職安や炊き出しに並んで過ごす父親というある種記号的な存在を、さほど白々しく見せなかったのは、香川照之の「役者生命をかけた」という演技の賜物である。
空洞化された威厳を頑なに守ろうとする父性を自然に表現している。

映画では語られないのに、この夫婦がおそらく20年近く育んできた家庭の歴史が、しっかり見る者に現前していたのは、二人の産み出した磁場によるものなのか、はたまた監督の力量か。
二人の視線が交錯するシーンは、その年月の重みをひしひしと感じさせている。

後半のファンタジックな展開における小泉今日子の目がそれまでの生活における目と全然違うのが素晴らしい。

それと付け足しで、小学校教師役のアンジャッシュ児島がなかなか良かったなあ。
出演シーンはなかなかのアクセントとなっていたのではなかろうか。

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