2008年10月のエントリー 一覧

『夜』橋本治

夜
『夜』橋本治

5編からなる短編集。
最初の4編は、男が家からふいにいなくなり、時を経てふらりと戻ってくるという情景を共通して描く。
理由は明確に説明されないが、小説としてきちんとそこに描かれている。
「yom yom」なんかや他の中間小説誌とかで割とありがちな類の話ともいえるんだけど、橋本治が書くと、やはり別物になる。
エッジがキンキンに立って、心に痛いほどだ。
最初の「暮色」が鮮やかで、個人的には好き。

残りの一編は、ゲイとゲイを明確に拒まないノンケの男とその間で空回りする女の話。
「好き」ということのそれぞれにおける意味の差を突きつけられて、我々は何を思えばいいのだろう。
孤独、を強く感じる、まさに「夜」な話。

『聖女の救済』東野圭吾

聖女の救済
『聖女の救済』東野圭吾
『容疑者Xの献身』に続くガリレオシリーズ最新長編。
やあ、これが映画第2弾になるのかなあと思いつつ、旬のうちに読んでしまおうと読み始めたら、あっという間に読み終えてしまった。
さすがのリーダビリティ。
淡泊な感じは相変わらずで、映画にするには地味な話だが、まあ『容疑者X』にしたところでそんな派手な話ではないわねえ。
どの女優がゲスト役になるのか、と考えながら読むのも一興かも。

トリックはまさに「ありえない」もので、意味ありげに撒き散らされた伏線がそう繋がるかあ、と感心したが、湯川の言う「虚数解」っぽさをもっと醸し出してくれたら良かったのになあと贅沢な言い分。

好き嫌いはあるだろうけど、このぐらいのクォリティを保ったシリーズに対して他に文句はない。

近況

ちょっとTV WATCH DIARYの間が空いてしまったね。
いくつか書きとめときたいことがあったような気がするけど、そのうちまとめて。

ここのところちょっと本腰を入れてラーメンブログ「ら喰い控帖」の移設作業に取りかかっている。
移設というか、ほぼ再構築なんだけど、タイトルもHPタイトルの「らのとりこ」に収束させて再出発しようと思っている。
大体80%ぐらい構築作業は終わったのだけど、肝心のショップデータの再入力がほとんど終わっていない。
営業時間等、最新データの確認をしながらになるから、これかなり時間喰う筈なので、未完成のまま見切り発車しようとは思っている。
なんとかこの一週間ぐらいの間に公開できるといいなあ、なんて希望的観測。

エドガー賞全集―1990-2007 (ハヤカワ・ミステリ文庫 エ 6-1)
『エドガー賞全集―1990-2007』ローレンス・ブロック他

現代ミステリ短編を読むのは久しぶりかも。ミステリマガジンとかもちゃんと追ってないしね。昔はこれでも「EQ」とか買ってたんだがなあ。
で、これは権威あるアメリカ探偵作家クラブ賞であるエドガー賞の1990年以降の最優秀短編賞受賞作を収録したお得な一冊。
冒頭のウェストレイクで、個人的には久々にドートマンダーに再会。
気分良くなってちょこちょこ読み進める。

一番読み応えがあるのは、おそらくトム・フランクリン「密猟者たち」(1999)だろうね。
マイ・ベストはジェイムズ・W・ホール「隠れた条件」(2006)かな。メリハリの効いた話だ。
チャールズ・アルダイ「銃後の守り」(2007)もありがちながら、余韻が残る。
ブロックのケラーもの2作は、さすがのリーダビリティ。

まあ、好き嫌いはあれど、1000円ならオトクといえる内容でしょう。

『聖家族』古川日出男

聖家族
ここのところ出た読みたい本が全部大長編でどうにもこうにも。
古川日出男は昨年から今年にかけていくつか読んだものの、いまひとつしっくりこない。
しっくりこないと言いつつも読み続けているからには、なんかひっかかるところがあるんだろうけど、それがはっきりしない。
だからこの新作大長編に手を出すのは躊躇したのだが、世評も高いようだし今度こそ気にいるかもしれないと、思い切って読み始めた。

いやあ、やっぱり合わないわ。
波長がちがうのかなあ。独特の文体のリズムにまったく乗れないんだよね。
だから読んでて全然気持ちよくない。
作者自身は書いてて随分気持ちいいんだろうなあとは思うのだが、その分こちらが冷めてしまう感じ。
途中からは読むのが苦痛になり、ずいぶん速読をした。
だから作品についてはまったく評価自体をすることができない。最後までちゃんと読んだけどね。

まあそういうこともあるんだろう。
ごめんねごめんねー。

『やりすぎコージー』(テレビ東京系 10月13日放映)
今週からゴールデンタイム昇格。
え、生なんだこれ。まさか毎週じゃないよね。
最初ちょっと見逃したので後でチェックするけども、ところどころグダグダの展開w。
雛壇に芸人多すぎるし。しかも中堅どころ。
まあ、お祭りだと思って苦笑しておきましょう。
それなりに楽しんだし。
今田の最後の言葉は「2時間すみませんでしたー」w。

『爆笑レッドカーペット 3時間満点コラボ祭り』(フジテレビ系 10月8日放映)
半年間の放映延長決定はまあ、当然でしょう。
ヒットしたから延ばしたということだけじゃなく、ここで打ち切るのはいろんな意味で責任放棄ともいえるんじゃないでしょかね。
あと半年の間に、受け皿を用意してね。(って、『スリーシアター』ってちゃんとした受け皿をまずひとつ作っててエラいのだけど)。

さて番組は、さすが3時間越えは長すぎてなんだか覚えてないですなあ、いろいろ。
フットの人魚ネタは彼らの本来の持ち味が出てて興味深かったなあ。
あとは、ナイツが絶好調であることとか、ザ・パンチはまだいけるってこととか。

そろそろなんだか「中笑い」「大笑い」「満点大笑い」にもう少し正当性を受け取りたくなってきたよ、個人的には。

メモり始めます。

ここ2?3日でなんとなく思い立って、本日からいよいよメモすることにした。
...って何を? って話なんだけど。
いや、とりあえずなんでも思いついたもの目についたものをメモしてみようと。
そっからこのブログのネタでもなんでも目が出てくれれば、と。

これまで普段、手帳は持ち歩かず、メモらしいメモはほとんど取らないで生きてきたわけだが、この辺でそんな生き方を180度変えてみようかと。
この2、3日で文房具屋やロフトなんかに行って、よさげな手帳はないか、システム手帳なんてこれまでまったく興味がなかったのだけど、どんなもんだろうかとウロウロ探し廻っていた。
スケジュール管理を改めてしたいってわけじゃないし、それはある程度PC&携帯で成立してるので、とにかくメモ用途に限れば別に手帳じゃなくてもいい。
MOLESKINEなんかはちょっと気になったりしたけども、最初からそんな高級なもん使わなくてもいいだろうと、100円ショップへ行ってミニメモと携帯ボールペンを購入。
とりあえず200円から始めよう、と、本日昼からメモを身につけて行動。

いやあ、結構メモることあるもんですな。
取捨選択することをやめれば、結構スラスラメモが取れる。
とにかくメモを持ち歩くということが肝心で、ピときたらとにかく書く。
で、問題なのは風呂ではメモが取れないってこと。
一番なんかアイディアとか沸く空間・時間なんだけどねえ。こればっかりは。

さていつまで続きますやら。

リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか (講談社現代新書 1957)
『リアルのゆくえ  ──おたく/オタクはどう生きるか』大塚英志+東浩紀

副題はそのままこの論者二人のことを指すとも解釈できる。
ひらがな表記とカタカナ表記にひとつの世代差を見出す態度が大塚にはあるわけだが、「オタク」であろうが「おたく」であろうが、僕にとっては微妙な距離感のある言葉である。

自分を振り返った場合、〈オタク〉と云われてもさほど違和感のないライフスタイルで青春期を過ごしてきたと自覚はしているのだが、この言葉が一般化した80年代末、宮崎事件が起きたあの1989年夏に、当時としてはかなり大規模な〈オタク〉の祭典のうちのひとつであった筈のSF大会のスタッフを経験したのを最後にそうした所からひとまず距離を置くようになる。

だから世間で〈オタク〉が注目を浴びるようになった時には、既に自分をその対象として認識しておらず、部分的にはある種のシンパシーを感じつつも全体としてはどこかしら他人事のような意識の仕方をしていた。
微妙な距離感というのは、そういうことである。

余談ながらもうひとつ個人的なことを重ねると、自分には二次元美少女キャラに対する拭いがたい苦手感があって、それを奉る傾向にあるとされる〈オタク〉のイメージを自分に重ね合わせることに対する偏狭な嫌悪感といったものがあることを告白しておく。

だから90年代以降のアニメ、ゲーム、ラノベへの関心も薄いし、幼き頃から培ったそれ以前のそうした対象への知識との格差は大きい。
当然、以降の〈オタク〉周辺の状況にも疎く、このあたりを取り巻く代表的な論客であろうこの二人の著作も、ほとんど追いかけてこなかった。
だが、このところなんとなく新書を中心に代表作を数冊ずつ読んでいたところで、ちょうどこの本が出た。

まさにこれを読むために準備をしていたかのようなもんだが偶然に過ぎない。
仮にそうだとしても果たしてこの本にそんな準備をするだけの価値があったのかなあという感想ではある。
とはいえ、この二人の思想背景に対するある程度の準備なくまったく白紙でこの本を読んでも、内輪話というかサークル内の言説といった部分も多く、なんのことやらわからないということになりかねない。
でもひょっとしたら実はその方が本質が見えやすいのかも知れないけどね。

ものすごく素朴な感想を云うと、「世代論議」ってみっともないよなあ、ということ。これ、改めて感じた。
論議をするときに、相手の世代を問題化するってのはそれほど有効なことなんだろうか。
自分が属する世代を非難されたところで、その事実を変えることはできないわけで、そこから不毛でない何かが産まれる可能性は限りなく低いように思う。

たとえば、2ちゃんとかでよくみかける「ゆとり」とか「ゆとり世代」とかいう蔑視語がとてつもなく嫌いだ。
「ゆとり教育」が正しかろうが間違っていようが、その世代が恣意的に選び取ったものでは当然ないわけで、そうした因果関係をまったく飛び越え自らの根拠のない優位性を誇る態度はまったくもって唾棄すべきものだと思っている。

自分の世代はああだったこうだったという昔話と、それに比べて君らの世代は、という世間一般によくある論調が、ここでの大塚の場合、東個人に向けた苛立ちとして表面化されているようではあるものの、でもやっぱり世代論に収斂されてしまうように読める。

世代間の論議が目玉であるこの本に対し、これがいささか的外れな感想であろうことは薄々感じるが、このまったく噛み合わないような、それでいて微妙にじゃれ合い的な(プロレス的な)雰囲気を感じなくもない不思議な対談本を読んだ感想としてはまあそんなところである。

読む前の予想に反して、あくまでどちらかといえばだが東に若干肩入れをしている自分にちょっとびっくり。

キングオブコント2008感想

キングオブコント、見終わりました。
さまざまな不安はそのまま的中したといってもいいけれど、それでも、というかそれを含んでさらに、というか、いろんな意味で興味深かったなあ。

Aブロック(名前の後は、番組での審査点数)
TKO 368点
初っぱなはやっぱ可哀相だねえ。採点の基準がまったくないので、そりゃこんな得点になるだろう。
100人の芸人が5点ずつ持って500点満点という採点法。
ずばぬけてオモシロイという確信がなければ、5点はつけられないだろうから、まずまずオモシロイというところで3点か4点となる。
となれば、自然となんとなくこの368点という数字になるよなあ。
持ち味を生かしたネタで悪くないと思ったけど、逆に言うと新鮮味もないということになるか、今となっては。

バッファロー吾郎 460点
そんなにオモシロイか、と問われると非常に困るのだけど、ラストも決まったし、まあ申し分なかろう。
なんていうか、ネタそのものはもとよりネタに向かう姿勢というか、立ち姿そのものがオモシロイ。
リスペクトされ過ぎ、という感じは若干するものの、そういう意味で応援したくなるなあ。

ザ・ギース  400点
こちらは逆に、ネタはそこそこオモシロイのだけど、立ち姿がまだ絵になってないというか。
笑い自体は起こってるし、悪くないけど印象に残りにくいんだよなあ。

天竺鼠 388点
思ったより良かったなあ。
ハチャメチャシュールの川原ワールドなんだけど、構成がしっかりしてた。(途中、ちょっとグダりかけたけど)
何度か声を出して笑ってしまったし、破壊力もあるけど、嫌いな人は嫌いだろうなあ。
この点数は低すぎるけど、同業者ウケしにくいということかなあ。やっかみもあるような。

Bブロック
チョコレートプラネット 415点
なるほどねえ。といった感想。
ちょっと点数が甘いんじゃないかね。

ロバート 470点
さすがだなあ。
舞台上、山本一人だけのシーンですでに爆笑を呼べる世界を作れるとは。
繰り返しパターンなので、途中弱い部分もあるけども後半変化を重ねてくることで笑いを誘う。
でももっとオモシロクなりそうでならなかったなあ。

バナナマン 482点
何度も見た朝礼ネタかあ。
もちろんウマイんだけど、個人的にはこの点数ほど評価できない。
とはいえ、横並びに見た時に決勝進出するのを否定するほどでもないのだけど。

2700 327点
この点はしょうがないけど、想像より悪くない。
というか、何度か見返すとちょっとクセになり笑ってしまうかも。
他のネタも見てみたくはなった。

ということで、下馬評通りにバッファVSバナナマンの一騎打ちが見られることに。

決勝のバナナマンのコントも結構知られたネタのようだけど、僕は初見。
かなり端折られていたとのことで、そのせいかシチュエーションが活かしきれずに掛け合いだけが印象に残るというコントとしてはどうかなあ、という出来。
一方のバッファロー吾郎は、馬鹿馬鹿しい設定と馬鹿馬鹿しい掛け合いは釣り合っており、コントと言う意味では軍配を上げたい。
でも、オモシロサの質が違うので難しい判定だよなあ。

ファイナリストによる記名審査は、あなたはどちらをリスペクトしていますか? と問うようなもので、メンツを見てこの時点でバッファの優勝を確信。
芸人が選ぶのだから文句は出ないというのは本当に果たしてそうか、というのをやはり感じてしまった結果ではあったが、バッファロー吾郎の優勝に個人的な異論はない。
中学生脳が受け入れられつつある世の中になってきつつあるのだなあ、という実感も含め、いろいろ感慨深いものはある。

『キングオブコント! 頂上決戦への道』(TBS系 10月3日放映)
いよいよ5日に開催が迫った、『キングオブコント2008』の予選の舞台裏等を追った事前番組。
M-1とかでもあるけど、初回からリキ入ってますなあ。
『キングオブコント』に関しては、各所で様々な不安を含んだ感想(決勝進出メンバーへの異議、出場者が審査し合うという決勝審査方法への不安等)を目にするけど、まあ、みんなの気持ちはわからなくもない。
ただまあ、お祭りなんでそう目くじら立てずにって感じかなあ。(実際に選抜という形の試合が行われている以上、芸人本人や肩入れしているファンにとっては、それで済むわけもなかろうが)。

個人的にはコントって実はあまり見る機会がなくて、オンバトあまり見てないし、エンタもじっくり見ないのでコントは飛ばしちゃったりしてる。
でもTBSは割とコントに理解がある局という印象。コント番組ちょこちょこやってるよね。
まだ見てないけど、これから押していく雰囲気の『笑撃!ワンフレーズ』という先日やってた番組もコント絡みみたいだし。

とりあえず、決勝進出メンバーを確認しつつそんな僕の認識を。
チョコレートプラネット
あぶない刑事ネタしか見たことないなあ。キレがあるのはわかるけど、そんなにオモシロイの? お手並み拝見。
ロバート
ここは純粋にファンですね。これまで見た彼らのコントはだいたい好き。
天竺鼠
あらびき団では川原の「ねむたーい!」がお馴染み。シュールの方向性で感覚的には嫌いじゃないけど、爆笑を呼び起こす感じではないかなあ。
2700
ここは唯一名前も知らなかったなあ。不安を感じつつまあ見てみましょう。
バッファロー吾郎
実はコントちゃんと見たことない、と思う。だから噂先行の実力をしっかり確認したい。
TKO
波に乗ってますなあ。センスあるしウマイのはわかったので、新ネタ見せてくれるの希望。
THE GEESE
ここもあまりまだ見てないなあ。せいぜい2?3度。結構好きかもという感じ。
バナナマン
芸人互選という審査方法だと、リスペクトの意味も含めて優勝候補なんだろうなあ。もちろん実力もあるし。

ま、なにはともあれ明日の本戦を楽しみに。

『情報7days ニュースキャスター』(TBS系 10月4日放映)
安住紳一郎×ビートたけしによる新ニュースバラエティ初回。
うーん、こんなにたけしを前面に押し出して(コーナー担当までさせて)使ってるとは思わなかった。
コメンテイターの位置づけかと思ってたら違うのね。
そういう意味では安住とのバランスが微妙だし、コンビネーションもまだこれから。
安住が『ブロードキャスター』の後をやると知ってちょっと期待してたのに、たけしが絡むと知っておおっと思う反面不安に感じていたのだが、いまんとこそんな感じ。
たけしは現時点では単なる絡みにくいオッサンですw。
二人の関係性がこなれてくるにはもちょっと時間が必要かなあ。
がっぷり四つに組めるまでは、もうちょっと他の出演者に工夫が要るのでは。
潤滑剤として適切な誰かをもう一枚欲しいところ。

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