『首無の如き祟るもの』三津田信三

首無の如き祟るもの

そろそろ年末だなあ。年間ベストの季節よのう。
と思い立って今年評判の良かったミステリを調べたところ、ダントツ人気のこちらを図書館で確保。
基本的に前情報なしで読み始めたかったのだが、この本に辿り着くまでの探索過程でうっすらとネタバレされかけており、それはトリックの一部かなにかでミステリではよく使われるあのパターンが使われているようだといった程度のうっすらぶりではあったものの、不安を抱きつつ読むことに。
旧家、因習、祟り、後継取り争い、と王道の怪奇本格のキーワードが立ち並ぶ。
こういうのは久々だなあ。
訥々とした語り口ながら、興味を持続させつつ終盤の謎解きにまで導く基本的な魅力はある。
実は前にも書いたと思うが、本格ミステリ好きではあるもののあまり謎解きでカタルシスを得たことは少ない。
論理的に導かれる答にあまりピンと来ない性質のようで、頭の悪い所以であるが、説明されればされるほどシラけてしまうことが多いのだ。
しかし、この作品の謎解きには参った。
ここまでやってくれれば、シラけるもなにもない。
懸念したようにネタバレされかけたトリックは使われていたものの、それが二重三重にも仕掛けられ巧みに利用されており、ラストの怒濤の謎解きとどんでんにおいては、ちょっとスレた読み手でもどこかで一つぐらいは、あっと声をあげるのではないか。
ご都合主義だとか、非現実だとか言うのは簡単だが、そんなことはこの作品の評価を少しも損なわないであろう。
ミステリのコードを利用しつくし、枠組みの中で遊び尽くし、その枠組み自体をも部品として利用して枠から超え出ようとした意欲的な作品といえるのではないだろうか。
個人的好みからは、満足より☆ひとつマイナスだが、優れた作品であるという評価は変わらない。

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