『エスペラント―異端の言語』田中 克彦

『エスペラント―異端の言語』田中 克彦 〈岩波新書〉
エスペラント語を小学生の時に囓ったことがある。
と、書くとえらく生意気そうであるが、囓ったも囓った、ほんの玄関から靴を脱いで上がり込んだぐらいのところまでである。
というのも、小学校5,6年の時のもっとも仲の良かった友人がエスペラント語を突如習得し始めたからであった。
彼自身はどうも祖父の影響を受けていたようであったが、着々と学習を続け、中日新聞の市民版に掲載されるほどのエスペランティストとなった。
その初期段階で、僕も大学書林の『基礎エスペラント』を購入して、おそらく最初の方だけ共に学んだかと思う。
頭脳明晰であった彼は、吸収力が速く、他の語学にも手を出した。結構マイナーな言語に興味を示していたように思う。
大学書林の他の言語学習書をいくつか記憶しているので、僕もそれに対抗してどこかの言語(たぶんドイツ語)を学ぼうとして早速挫折したのだろう。
英語すらまだきちんと学ぶ以前の話であるから、当然だ。
以後、語学に興味は示すが、習得は不得手というのが、僕の基本属性となっている。

それはともかく、本書。
エスペラント語の語法自体の解説はごくわずかで、解説書のたぐいではない。
小学生の時は意識すらしていなかったが、その後知ることとなったエスペラントの思想的背景、また思想界や宗教に与えた影響を説きつつ、人工言語と自然言語の対比から、言語というものを改めて見つめなおさせてくれる。
「美しい日本語」などというスローガンを無意識に唱えることの野暮さ加減、無頓着さに関して目を開かせてもらった。
まさに「言語にとって美とは何か」ということを再考するきっかけになるかも。

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